物流倉庫の保管とは?保管の注意点と見直しポイントを解説
Ξ目次
01. 物流業務における保管の役割
1-1.保管の役割
1-2.商品を適切に保管する重要性
02. 保管の種類
2-1. 積層ラック
2-2. 高層ラック
2-3. パレットラック
2-4. 移動ラック
03. 商材別の保管方法について
3-1. 食品・医薬品
3-2. 機械部品
3-3. 化粧品
3-4. 衣料品
04. 保管時の注意点
05. 保管効率をアップさせるための見直しポイント
5-1. 保管スペースの見直し
5-2. 設備の見直し
5-3. ロケーションの見直し
06.まとめ
物流において、保管は単なる物の一時的な置き場という以上の役割を果たしています。商品や原材料が効率的に流れることを支える重要なプロセスであり、サプライチェーン全体の最適化に貢献します。この記事では物流における保管の主な役割と、その重要性について詳しく解説します。
01.物流業務における保管の役割
1-1.保管の役割
①在庫の確保
商品を需要に応じて迅速に供給できるよう、一定量の在庫を保管します。季節変動や予期せぬ需要の変化に対応可能です。
②リードタイムの短縮
生産地から消費地までの時間をカバーするための中継地点として機能します。顧客が商品を注文した際、迅速に出荷可能な状態を維持します。
③リスク分散
大量の在庫を一か所に集中させると、災害や事故のリスクが高まるため、複数拠点で分散保管します。また、在庫切れリスクを軽減するために必要です。
④品質の維持
商品ごとの特性に応じた保管条件(温度、湿度、衛生管理など)を設定し、品質を保ちます。特に食品や医療品など、劣化しやすい商品では重要です。
⑤コスト削減
一括仕入れや大量輸送により、調達や物流のコストを抑えられるメリットがあります。適切な在庫管理により、不良在庫や廃棄ロスを最小化します。
1-2.商品を適切に保管する重要性
①顧客満足度の向上
良い状態の商品を確実に顧客へ届けることで、信頼と満足度を高めることができます。逆に、損傷した商品や納期遅延が起きると、ブランドの信頼性が低下します。
②法令や規則の順守
一部の商品には、法律や規制で定められた保管条件があります。これを守ることで、罰則やトラブルを回避できます。例:危険物や医療機器には特別な保管基準が求められることがあります。
③長期的な信頼構築
取引先や顧客に対して、適切な保管管理を実践することで「信頼できるビジネスパートナー」としての評価を得られます。
※適切な保管は、商品を守るだけでなく、ビジネスの成長と持続可能性を支える基盤です。信頼できる保管システムやパートナーと連携することが成功への第一歩です。
02.保管の種類
2-1. 積層ラック
水平に棚が複数段設置されたラックで、比較的低い高さで使用されます。軽量から中量の荷物の保管に適しており、手作業でのピッキングが主流です。中小規模の倉庫や、頻繁に商品を出し入れする場合に利用されます。用途は、雑貨、小型商品、軽量の部品や工具などが多いです。
2-2. 高層ラック
大型倉庫で使用される、高さが10~30メートル以上のラックです。フォークリフトや自動倉庫システム(スタッカークレーン)を使用して荷物を出し入れします。垂直方向の空間を最大限に利用でき、大量保管に適しています。用途は、食品、飲料、工業製品など、出し入れ頻度が少なく、大量保管が必要な業界に導入されています。
2-3. パレットラック
パレットに乗せた荷物を直接ラックに収納するタイプのものです。フォークリフトを使用して荷物を保管・出庫します。高さは通常5~10メートル程度で、ラックの幅や段数を柔軟に設計することが可能です。用途は、食品、飲料、建材などの重量物の保管に適しています。
2-4. 移動ラック
ラック自体が移動する構造で、レールや車輪を用いて操作します。通路を必要時に開けることで、スペース効率を大幅に向上することが可能です。手動または電動でラックを移動するシステムが一般的です。用途は、倉庫スペースが限られている場合に適しています。書類や書籍の保管に利用される場合が多いです。
03.商材別の保管方法について
3-1. 食品・医薬品
食品や医薬品は、品質を保つために特に厳格な保管基準が求められます。
【食品】
冷凍食品は-18°C以下、冷蔵食品は0~5°C程度で保管します。常温食品も適切な温湿度での保管が必要です。害虫・害獣防止のための防虫灯設置や定期清掃、異物混入を防ぐために周囲の清潔さを徹底しなければなりません。また賞味期限が近いものから先に出荷されるように「先入れ先出し」の原則を厳守します。
【医薬品】
温度は2~8°C(冷蔵)または15~25°C(常温)が一般的です。湿度も40~60%程度で管理します。毒薬や劇薬は一般薬品と区分して保管しなければなりません。製品の原材料の調達から消費や廃棄までの履歴を追跡できる状態にするトレーサビリティが求められます。
3-2. 機械部品
金属の錆や部品の変形、損傷を防ぐための適切な環境が必要です。防錆のため、湿度40~60%に保ちます。湿気が多い場合は防湿材を活用します。また衝撃や振動で破損しないよう、梱包材(エアキャップやフォーム材)も使用する場合があります。重量物は、パレットラックや専用の耐荷重ラックで保管します。磁気が影響する部品は磁気を遮断するエリアでの保管が必要になります。
3-3. 化粧品
商品の劣化や汚染を防ぐため、温湿度や衛生面が重視されます。一般的に15~25°C、湿度40~60%の環境を維持します。紫外線による劣化を防ぐため、直射日光は避けなければなりません。遮光保管が必要な場合もあります。埃や異物混入を防ぐため、保管エリアの清掃を徹底します。香水やエタノール含有商品は揮発性が高いため、他の商品とは区別して保管します。
3-4. 衣料品
湿気や汚れ、害虫を防ぎながら形状を維持することが重要です。カビの発生を防ぐため、湿度は40~60%の環境にします。また衣料品用防虫剤を設置し、天然繊維商品には特に注意が必要です。型崩れを防ぐためにハンガー掛け保管を採用します。たたむ場合はシワがつかないよう注意が必要です。衣類をビニールカバーで覆うか、密閉式の収納袋を使用する場合もあります。サイズ・デザイン・季節性などの基準で整理して保管します。
04.保管時の注意点
4-1. 保管環境の管理
温度や湿度に敏感な商品(食品、化粧品、電子機器など)は、適切に状態を維持する必要があります。また倉庫内の空気を循環させ、カビや悪臭の発生を防ぐことも大切です。直射日光や紫外線に弱い商品は、遮光カーテンや専用のカバーで保護する場合もあります。
4-2. 安全な配置
重い商品は棚の下段、軽い商品は上段に配置します。これにより棚の転倒や作業時の事故を防ぎます。商品の積み重ねは過剰にならないような注意が必要です。倒れるリスクを防ぐため、パレットや固定具を使うことも大切です。倉庫内の通路は商品や機材で塞がないようにしなければなりません。作業効率と緊急時の避難を考慮します。
4-3.商品の特性に合わせる
食品や衣類は、防虫剤や湿気取りシートなどを活用します。賞味期限のある商品は、「先入れ先出し」を徹底し、期限切れを防ぎます。
4-4. ラベルや記録の管理
商品名、数量、保管日を明記したラベルを使用します。デジタルツールやバーコードシステムを活用して、在庫の追跡と更新をリアルタイムで行います。
4-5. 定期的な点検
汚れ、破損、劣化の有無を定期的にチェックします。また棚やラックの劣化、異常がないかも定期的にチェックします。
05.保管効率をアップさせるための見直しポイント
5-1. 保管スペースの見直し
無駄なスペースを削減し、効率を向上させることができます。長期間動いていない在庫や売れ筋でない商品を特定し、廃棄・リサイクル・セールで処分します。在庫回転率を分析し、必要な量を適切に設定することが求められます。
5-2. 設備の見直し
作業効率と保管効率を同時に向上させます。移動式の棚を配置し、必要な時にだけ通路を作ることでスペースを有効活用できます。作業者が無駄な動きをしなくて済むような設置も考慮します。現在の保管物のサイズに合った棚やラックの見直しも必要です。不要に大きい棚や設備はスペースを圧迫するので注意が必要です。
5-3. ロケーションの見直し
戦略的に見直すことで、入出庫作業の効率化が図れます。「ABC分析によるロケーション管理」も重要です。Aランク:(出荷頻度が高い商品)は、出入口やピッキング作業エリアの近くに配置します。B・Cランク:(頻度が低い商品)は奥や上段に保管します。またロケーションコードの導入も効果的です。各保管場所にコードを割り当て、商品の位置を正確に管理します。WMS(倉庫管理システム)を活用することで、ロケーション管理の精度が向上します。
06.まとめ
適切な保管は、商品価値を守るだけでなく、ビジネスの成長と持続可能性を支える基盤です。信頼できる保管システムや物流倉庫と連携することが成功への第一歩です。